開発するシステムの基本的コンセプト

 災害が発生すると多くの機関で建物の被害調査が実施されますが、それぞれ目的が異なるため、一つの被災建物に対して同じような調査が何度も繰り返されることになっています。災害時には建物の状態を判断できる専門家は少ないため、調査情報を共有することによって、より効率的に調査や評価を実施する必要があります。

1.建物被害調査プロセス全体のデジタル化

 現在の建物被害調査は、紙の図面や調査票を用いたアナログ方式の調査となっています。アナログ方式は、紙と筆記用具があればはじめられますが、一方で

a) 被害の記入は誰でもできるが、被害量の読み取りは専門家でも難しい

b) 図面に記入された被害と撮影された被害写真との対応が難しい

c) 被害状況の修正や更新が難しい

d) 高層住宅のように多くのフロアが存在する建物では、被害の全体像を把握することが難しい

など、多くの課題があります。
 そこで、建物被害調査プロセス全体をデジタル化することによって、これら課題の解決をめざしています。

2.被害の調査作業と評価作業の分離

 さらにさまざまな被害調査の方法は、それぞれの調査目的に最適化されているため、調査結果を相互利用することができません。そこで、従来の建物被害調査における被害の調査作業と評価作業を分離し、調査結果の相互利用が可能なしくみの構築を目指しています。ここで被害の調査とは、建物に発生した損傷の場所と状況を記録する作業であり、被害の評価とは、調査から得られた損傷情報から建物の状態を評価する作業と定義します。

 開発するシステムは、調査の専門家のみならず被災者が自分の居宅の調査ができるようなしくみを構築します。